【内容】
XRによる近未来の文化観光体験
関係人口増大の経済価値
次世代の町衆「ソシオ」づくり
1.XRによる近未来の文化観光体験
2030年頃には、AR グラスなどのデバイスを実装して、文化観光を楽しむスタイルが普及すると考えます。
そうなると、既存のリアルな街並みや施設を活用して、デジタル上に多彩なコンテンツを上書きしていけるようになります。
街を歩きながら、神社仏閣や文化財の多言語での解説や伝統工芸の制作風景が、必要に応じてコンテンツ化されるようになると、観光資源に関する文脈などの情報体験は非常にスムーズになるのではないでしょうか。
従来は、リアルに人が集まれる場所に会場を設営し、開催する必要があった各種イベントが、開催場所・時間と鑑賞場所・時間とを自由にマッチングさせることも可能になります。
さらに商業利用も可能です。
小さなコーヒースタンドが、個性的なブックショップになったり、フラワーショップでユニークなスニーカーが買えるようになるかもしれません。
基本的にはオンライン上での購入が中心ですが、リアルな場所の特性やストーリーを巧みに活かして、色々な場所で「裏ショップ」が展開可能になります。
このように AR などの先端技術の導入・実装が進めば、日本の文化観光の楽しみが一気に加速するのではないでしょうか。
2.関係人口の増大による経済価値
前項までで述べた文化観光の三層構造は、日本各地の観光資源を活用して、幅広い関係人口の増大をゴールにしています。
このゴールに至る経済効果を検討してみます。
日本の国内家計最終消費支出(約280兆円)を総人口(約1.26億人)で割ると定住人口一人あたりの年間消費額は222万円になります。
一方交流人口は国内旅行費用において一人当たり消費額が宿泊5.5万円、日帰り1.7万円(2019年)となっています。
(因みに訪日外国人一人当たり消費額は15.8万円)
関係人口が季節毎に来訪宿泊すると想定すると年4回22万円となり、約10人で定住人口に相当します。
同様に毎月来訪宿泊する想定では、年12回66万円で、実に約3人で定住人口と同じ経済効果をもたらす計算になります。
もちろん一般の観光客とは行動も異なり、消費単価も変わるでしょうが、マーケティングにおいて新規顧客の獲得費用は、リピート客を維持する費用の5倍かかると言われます。
「20:80の法則」で語られるように、2割の常連客が利益の8割に貢献することを勘案すると、関係人口が地域にとって非常に大きな経済効果をもたらすと想定されます。
3.次世代の町衆「ソシオ」づくり
「ソシオ」とは、FCバルセロナなどの「ソシオ」が有名ですが、ファンから一歩進めた株主的な参画者を意味します。
私たちは、ソシオを単なるユーザー(消費者)としてだけではなく、「共創プレイヤーの立場でもコミットする:ファンの進化形」と定義しています。
大手食品メーカー「カゴメ」は、株主10万人構想を掲げ、2013年には個人株主が約17万人、総株主のうち99.5%(約6割の株式割合)に及んでいます。
個人株主は長期保有する傾向にある上、月額購入単価が、一般顧客100円に対し、1300円に上っています。
まさしく「ソシオ」として、カゴメを支える存在になっています。
街にも、街の魅力を支え、共創していく役割を担ってくれるソシオが必要ではないでしょうか。
ソシオは、高頻度、高単価のヘビーユーザーであり、街の応援団であり、街の研究員&口コミ・インフルエンサーという「次世代の町衆」的な存在と言えます。
「面白きこともなき世を面白くするは、住みなすものの心なりけり」とは幕末の志士:高杉晋作の言葉とされていますが、あらゆる店・場所・街の隠れた魅力を見出すことができる「ソシオ」づくりこそ、文化観光のミライではないかと妄想します。
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