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シェアオフィスの課題 シン・シェアオフィス ⑤

【内容】

  1. シェアオフィスの事業構造

  2. シェアオフィスの事業者特性

  3. シン・シェアオフィスの存在価値

 

1.シェアオフィスの事業構造

シェアオフィスの事業構造を整理してみます。

シェアオフィスは、従来のオフィスフロアを小割りにして、会議室などの共用スペースを設けて、転貸する事業モデルです。

ですから低下した通路分や会議室分のレンタブル比分を、元のオフィス賃料に上乗せして転貸料金を設定していく必要があります。

また、ワークスペースのデスクに加えて、コピー・プリンターなどのIT機器をあらかじめ用意されていますし、光熱費や通信費や、受付などの人件費が、基本料金に含まれた料金設定になっています。

ですからシェアオフィスの個室を借りた場合の、坪当たりの賃料単価は、その立地に立つ通常オフィス賃料の3倍程度に設定する必要があると言われます。

月坪3万円程度の都市部のビジネスエリアでは、10万円を超える単価になります。

フリーランスや小規模事業者であれば、オフィスの内装工事や家具什器などの初期投資、人件費や光熱費などの諸経費を含めた総額と考えれば、コストを抑えられ部分がメリットになります。

一方で、一定規模以上の事業者にとっては、暫定的なプロジェクト利用や、従業員が増えて常に広い部屋への引越しが必要な場合でなければ、シェアオフィスは割高に見えてしまうのでは無いでしょうか。

フリーデスクの場合でも、一坪あたり一席の計算で、席数の2倍程度のメンバー数でないと、混雑してデスクが確保できず、満足度が下がって退会してしまうと言われています。

シェアオフィス事業は、それほど利益率の高い事業構造ではないという事です。

 

2.シェアオフィスの事業者特性

シェアオフィス事業が、単体では利益率が高くないということは、事業スケールを求める「企業」からすると、多店舗展開を図る必要があるということになります。

広義のシェアオフィス業界という視点で見ると、無人個室オフィスではZXY (ジザイ:200拠点以上)、 H1T(直営150拠点)などが多店舗ネットワークを形成しています。

利便立地にネットワークを築くという戦略では、資本力による競争になってしまいますので、今後は駅に個室ブースを展開する鉄道会社を交えて、「連携・統合」が進んでいくのではないでしょうか。

一方で、人的なサービスを差別化ポイントにする分野では、リージャス(国内170拠点)やサーブコープ(国内30拠点)などの老舗企業に対して、 We Work (国内40拠点)、ビジネスエアポート(国内20拠点)などの新興企業があります。

こちらは高付加価値を提供することで、客単価の向上を図ろうとしていますが、受付などのホスピタリティだけでは、マーケットも限られるため成長にも限界が流のではないでしょうか。

 

3.シン・シェアオフィスの存在価値

シェアオフィス事業は、単体の事業性に高くない中で、拠点数の拡大にも客単価の向上にも、限界があるビジネスだという事が前提になります。

ですから事業として成立させるには、公共施設と同様に元のオフィス賃料を低く抑えていく必要があるということになります。

次世代のシェアオフィス(シン・シェアオフィス)を検討するには、そのシェアオフィスの存在が、ビル開発全体にどのように貢献できるのか?どのような価値提供が可能なのか?が問われているのだと考えます。

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