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アイドルの「推し活」 「推し活」文化 ⑦

【内容】

  1. AKBビジネス

  2. プロデューサーの狙い

  3. AKBビジネスの功罪



1.AKBビジネス

「推し活」を語る上で外せないのが、「AKB48」です。

2010年、2011年の「AKB総選挙」は、Twitterへのつぶやき数を大きく跳ね上げ、テレビのワイドショーでも取り上げる様になりました。

AKB以前は、ファンが応援目的は、発売されるグループの曲をヒットさせる事でした。

ところが AKBでは、アイドル個人のグループ内でのランキングを上げる事が、ファンのミッションになっていました。

総選挙で投票するために 複数の投票権付きCDを買うので、売り上げは伸びますが、曲をヒットさせるためではなくて、握手会の列に並ぶために、さらには「推し」ている子のランキングを上げるために、買うのです。

2010年代に入って、AKBグループの CD販売数は爆発的に増え、一時は、シングルのミリオンセラーは、全てAKBグループという様相になりました。

CDの販売数を伸ばすために、さまざまなセールス手法が駆使されます。

  1. 同一タイトルシングルの複数仕様:初回限定盤や劇場盤と通常盤など、複数の仕様とノベルティの違う商品を発売します。

  2. 生写真の封入:CDの特典として、メンバーの生写真絵お封入します。ランダムに封入される為、お目当てのメンバーの写真を手に入れる為、」複数枚の CDを購入することになります。

  3. 各種投票権:選抜総選挙や各種ランキングイベントに参加する為に、 CD購入します。所定の CD一枚につき一票を投票できます。

  4. 握手会:イベント前後で、商品一点あたりメンバー一人と握手できる権利です。



2.プロデューサーの狙い

AKB48はテレビ中心のアイドルシーンに対して、「毎日劇場で公演をして、成長の過程が見えるアイドルが、面白そう」という秋元康氏の着想から生まれました。

2005年12月に秋葉原の専用劇場がオープンし、最初の観客は7人とごく少数でしたが、3ヶ月後には劇場がいっぱいになります。

「成長するアイドルに対するシンパシー」は、ネット上の口コミ力で、一気に拡散していきます。

AKBとは、各メンバーが多様な成長をみせ、ファンとの関係を作っていくための、プラットファームだったのです。

これはプロ野球や Jリーグ、Bリーグなどと同様の仕組みだと言えます。

このプラットフォームは、ファンに対して、チーム全体を推すと同時に、メンバー一人を決めて推す、競技場の役割も担っています。

そしてファンが推す特定のメンバーを応援する中で、彼女たちが鎬を削り、成長する姿が、ファン自身の応援との相関関係で「物語化」します。

それを具現化する仕組みが、総選挙や握手会というわけです。

SNSをメンバーに解放したり、素人集団だからこそ「オープンなプラットフォーム」を用意することで、さまざまな人たちが関われるビジネス機会を提供したかったと言います。



3.AKBビジネスの功罪

かつては、 CDのセールスと世間の流行は、ほぼイコールであり、ヒットチャートに乗り曲は、若者を中心に一定の認知度を得ているものでした。

しかし、」 AKB商法の台頭により、この法則は崩壊し、マイナーな曲でも、溶け天目当てで、 CDを買いまくればセールスに結びついてしまう為、ヒットチャートは世間が知らない曲で溢れることになります。

その結果、音楽から「流行の象徴」としての側面が消え、拝金主義的な要素が多く現れる様になったと言えます。

「会いに行けるアイドル」として人気を得ていた AKB48は、ファンの多くが音楽やダンスよりも、メンバー個人のパーソナリティと、ファンとの直接的なコミュニケーションに関心を持っていました。

中心メンバーの卒業やコロナ禍でのライブ・イベントの中止などが相まって、 AKBビジネスの下火になっていきますが、「推し活」のエッセンスを仕組み化した事例として、非常に参考になると思います。


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