【内容】
日本酒業界の特性
輸出の現状と課題
事業継続に向けた課題
1.日本酒業界の特性
経済研究所のよる研究プロジェクト「清酒製造企業の成長戦略に関するアンケート調査:2015年」が、日本酒業界の実態を知る上で有効です。
1500余の蔵元に調査票を配布して、約370の有効回答がありました。
日本酒業界の特性は下記の通りです。
創業からの年数:創業100年以上150年未満が42.5%と最も多く、創業100年以上が、87.1%を占める老舗業界と言えます。
規模:生産規模が500石(一石:100升=一升瓶100本分)以下の家業型企業が47.0%、500〜2000石の地場型企業が37.3%で、併せて全体の84.3%を占めています。
大多数が中小規模の清酒製造企業で、構成されていることが分かります。
顧客の特性:50代が44.4%、40代が33.7%で、両者で全体の約8割を占めています。男女比では7:3 の比率になっています。中年男性が主な顧客になります。
販売エリア:地元41.2%、県内27.2%で、地元顧客主体であることが分かります。
自社の強み:製品力が強みと認識する企業が、36.3%を占めています。
麹菌と酵母という2種類の微生物を、コントロールする複雑な工程で、さらに特定名称酒の製造では、職人の暗黙知的なノウハウが、大きいことが要因のようです。
自社の課題:自社の強みが少ない分野として、販売・営業力(15.2%)、外部資源の活用力(10.9%)従業員の創造力(15.2%)などが挙げられています。職人気質が課題として認識されているようです。
2.輸出の現状と課題
同調査によると、日本酒輸出に関する動向は下記の通りです。
①輸出の状況:「行っている」62.2%、「行う予定」18.6%と、8割を超える企業が日本酒の輸出に対して、積極的な姿勢を見せています。
②輸出比率:生産量に占める輸出量の比率は、平均3.85%と非常に低い水準で止まっています。
③ 輸出推進上問題点:「知識・ノウハウの不足」50.5%、「専門人材の不足」53.6%、
「輸出に関わる手続きの複雑さ」48.5%となっています。
3.事業継続に向けた課題
同じく今後の事業継続に向けた課題は下記の通りです。
内的な課題要因:製造設備の老朽化61.8%、職人の確保43.6%、経営資金の調達47.0%、後継者不足32.6%
外的な課題要因:酒米などの原材料の確保57.8%、酒販店や卸の減少49.4%、既存顧客の減少49.6%
老舗の中小企業中心の業界ですが、先細りする国内市場を踏まえて、高い輸出意欲が伺えます。販路を広げられず、輸出量が伸びない状況を打開するためにも、ノウハウや人材の体型的な支援が必要ではないでしょうか。
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